
?T. STCW条約及び国際船舶制度
我が国における今後の船員制度近代化のあり方について調査研究を進めるに当たって、平成9年2月に発効した改正STCW条約(船貝の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する国際条約)の内容と、現在、海運造船合理化審議会において審議されている国際船舶制度の行方にどのように対応していくべきなのかがは極めて重要な課題であり、このような船員制度近代化に大きい影響を与える動向について概観すれば、以下のとおりである。 ?T−1. 1995年改正STCW条約の要旨
1. 条約の改正に至る経緯
改正前の1978年STCW条約は、1967年に英仏海峡で発生した巨大タンカー、トリーキャニオン号の座礁に伴う広範囲な海洋汚染事故を契機に、国際的に船員の資質の向上を図る必要があるということから、海上における人命、財産の安全と海洋汚染の防止を目的に締結されたもので、それまで各国政府の裁量に任されていた船員の教育・訓練や資格証明書の発給に関する基準を国際的に統一しようという試みの第一歩となった。 条約はこのような関係者の期待の中で、1984年4月28日に発効(我が国は1982年5月に批准)し、すでに12年余が経過し、平成8隼6月現在118ヵ国がこの条約に加盟している。 (1)条約の全面的見直しの背景 78年条約はこれまで数回の部分的な改正が行われたが、今回このように全面的な改正が行われるようになったことについては次のような理由が考えられる。 第一に、条約発効後この十数年の間に大きな海難事故や環境汚染が少しも減少していないこと、しかも発生した事故の原因の大部分が、人的要素に起因していることが挙げられる。 第二に、現在の条約は資格証明書を発給する要件として、詳細な知識要件を規定しているが、それらの知識が本当に身についているのかという評価や判定は、すべて各締約国の主管庁に任されているので、形式上はSTCW条約に従って発給された資格証明書であっても、所持者の能力が本当に条約の基準を満たしているかどうか、それだけでは判断できないということである。事実、実態は要件をほとんど満たしていないにも拘わらず、自国の船員に対して条約に基づく正式な証明書を発給していると思われる締約国
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